歴史と外交


東郷 和彦 (著)
著者は元外務省欧亜局長で鈴木宗男氏との深いパイプを持っていた。
ロシアンスクール(派閥)で佐藤優氏上官にあたる。
ムネオハウスに端を発した一連のロシア問題で火の粉を浴び、
田中真紀子氏に更迭された後に退官。
祖父は太平洋戦争開戦時及び終戦時の日本の外務大臣
A級戦犯として東京裁判にて裁かれた東郷茂徳氏。



このような背景の著者が
日本が戦後の漂流から抜出す為、世界との和解を求め
国内世論視点にとどまらず、国外から観た日本の立場と
双方の視点を交えて、靖国慰安婦・日韓・原爆そして
東京裁判を解説する。



本書では事実のうらにある、個々人の背景がとても新鮮。
一例では、従軍慰安婦問題の中で、
2006年9月の下院外交委員で日本政府に対して
公式謝罪を求める決議案が可決されたことに端を発した、
米国下院における従軍慰安婦問題が説明されている。
他国が他国に対して行った話なんてどうでもいい事じゃんと
思いがちなのだが、現在のアメリカ人の考えがそこにはあって
自分の娘がそういう立場に立たされたらということを
本能的に考えているのだそうです。
60年前の視点でとらえているのではないとのことです。
それも10年、20年前のアメリカではここまでことは無かったと。
我々がそんなことを今更と考えても、彼らの視点が違うのだから
幾ら理不尽に思ったとしても、それが現実なんだと。
外交問題に関わらず、文化的・地理的背景を知らないと
大変なことになる一例です。



また、東京裁判での見解は、孫として外交官として
いわゆる日本人よりも身近な問題としてとらえられるが故の
判断の矛盾みたいなモノが伝わってくる。


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歴史と外交─靖国・アジア・東京裁判
歴史と外交─靖国・アジア・東京裁判 (講談社現代新書)